帯状疱疹ワクチンのご案内


1. はじめに

日本人成人の90%以上の方は帯状疱疹ウイルスの保有者であり、50歳を過ぎると免疫力の低下に伴い体内に潜んでいたウイルスが再活性化し、80歳までに約1/3の方が帯状疱疹を発症するといわれています。帯状疱疹は一度発症すると目立つ皮疹や長期的に続く神経痛、難聴やめまいに加え、場合によっては失明などの重い症状が見られるため、その発症や重症化を予防するために開発されたのが帯状疱疹ワクチンです。あらかじめ水痘・帯状疱疹ウイルスを弱毒化・無毒化させたウイルスを注入することで免疫が素早く働くように促し、帯状疱疹の発症予防・重症化予防が期待できます。はじめに帯状疱疹についてご説明し、その後、帯状疱疹ワクチンについてお話していきます。

2. 帯状疱疹とは

帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気です。体の左右どちらかの神経に沿って、痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれが多数集まって帯状に生じます。症状の多くは上半身に現れ、顔面、特に目の周りにも現れることがあります。

帯状疱疹 症例

通常、皮膚症状に先行して痛みが生じます。その後皮膚症状が現れると、ピリピリと刺すような痛みとなり、夜も眠れないほど激しい場合があります。
多くの場合、皮膚症状が治ると痛みも消えますが、神経の損傷によってその後も痛みが続くことがあり、これは帯状疱疹後神経痛と呼ばれ、最も頻度の高い合併症です。また、帯状疱疹が現れる部位によって、角膜炎、顔面神経麻痺、難聴などの合併症を引き起こすことがあります。加齢、疲労、ストレスなどによる免疫力の低下が発症の原因となることがあります。

80歳までに約3人に1人が帯状疱疹

帯状疱疹の発症には加齢が関係しており、日本人では50代から帯状疱疹の発症率が高くなります。50代、60代、70代と発症率は増加し、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になるといわれています1)。帯状疱疹になった患者さん全体のうち約7割が50歳以上です。しかし残りの3割には20代~30代も含まれており、若い人でも発症する可能性があます。

03.帯状疱疹発症のメカニズム

帯状疱疹は、多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こります。
水ぼうそうが治った後もウイルスは体内(神経節)に潜伏していて、過労やストレスなどで免疫力が低下すると、ウイルスが再び活性化して帯状疱疹を発症します。発症すると皮膚の症状だけでなく神経にも炎症を起こし痛みが現れます。神経の損傷がひどいと皮膚の症状が治った後も痛みが続くことがあります。日本人成人の90%以上はこのウイルスが体内に潜伏していて帯状疱疹を発症する可能性があります。

日本人成人の90%以上はこのウイルスが体内に潜伏

04.水ぼうそうと帯状疱疹の関係

水ぼうそうと帯状疱疹の関係
  • ・はじめて水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したときは、水ぼうそうとして発症します。
  • ・水ぼうそうが治ったあとも、ウイルスは体内の神経節に潜んでいます[潜伏(せんぷく)感染]。
  • ・加齢やストレス、過労などが引き金となってウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に到達し、帯状疱疹として発症します。

05.発症年齢

  • ・60歳代を中心に50歳代〜70歳代に多くみられる病気ですが、過労やストレスが引き金となり若い人に発症することも珍しくありません。
  • 発症年齢

06.主な発症部位

  • ・一般に身体の左右どちらか一方の神経に沿って帯状にあらわれるのが特徴です。
  • ・胸から背中にかけて最も多くみられ、全体の半数以上が上半身に発症します。また顔面、特に眼の周囲も発症しやすい部位です。

07.帯状疱疹は人にうつるの?

帯状疱疹は人にうつるの?
  • ・帯状疱疹は他の人に帯状疱疹としてうつることはありません。
  • ・帯状疱疹の患者さんから水ぼうそうにかかったことのない乳幼児などに、水ぼうそうとしてうつる場合があります。

08.帯状疱疹ワクチンとは

実際には帯状疱疹ワクチンには、2016年に認可された弱毒生水痘ワクチンと2020年に認可されたシングリックス®の2種類があります。弱毒水痘生ワクチンとは弱毒化された生きたウイルスが含まれている生ワクチンで、小児に使用する水痘ワクチンと同じものです。一方シングリックス®は帯状疱疹を予防するために独自に開発されたワクチンで生ワクチンではありません。帯状疱疹になりやすいのが50歳以上になることが多いため、帯状疱疹ワクチンは50歳以上からしか受けることができません。帯状疱疹ワクチンの特徴は以下の通りです。

09.水痘ワクチンと帯状疱疹ワクチンの比較表

水痘ワクチンと帯状疱疹ワクチンの比較表

10.帯状疱疹ワクチンの副反応は?

帯状疱疹ワクチンの副反応も弱毒水痘生ワクチンとシングリックスで異なりますが、一般的にシングリックス®の方が副反応のでる可能性が高いといえます。具体的には以下の通りです。

【重大な副作用】 

ショック・アナフラキシー、血小板減少性紫斑病(0.1%未満)

【その他の副反応】

1) 弱毒水痘生ワクチンの副反応

弱毒水痘生ワクチンの副反応

特に水痘ワクチンで注意すべき副反応としては接種後1-3週間後の発熱や水痘様発疹がみられることがあります。通常は数日以内に消失します。
(参照:弱毒水痘ワクチンの添付文書

2) シングリックス®の副反応

重大な副作用

ショック・アナフラキシー(頻度不明)

その他の副作用
その他の副作用

(参照:シングリックス®の添付文書

シングリックス®の臨床試験を行った論文によると、 シングリックス®接種後7日間に起こった主な副反応としては注射部位の痛み78%、赤み38%、腫れ26%という結果になっています。全身性の副反応では筋肉痛40%、疲労39%、頭痛33%、悪寒24%、発熱18%、胃腸症状13%です。これは体の中で強い免疫をつくろうとするためといわれており、7日以内に多くの副反応は弱くなっていきます。

11.私の経験

最近、帯状疱疹ワクチンについてTVのコマーシャルでよくみかけます。また知人の中にも帯状疱疹のワクチンを接種したという人がいます。そして日常の外来診察をしていると、帯状疱疹になった患者さんの中には顔面にできてしまい、その後シミになって残ってしまう方もいます。冬場にはピリピリ痛いと言っている方もいます。さらに痛みが残り、辛いと言っている患者さんも結構多いです。

そこで自分でもワクチンを接種してみようと思い、今年6月に不活化ワクチンのシングリックス(1回目)を接種しました。副反応はやはり頻度の高かった、注射部位の痛み、赤み、腫れ、筋肉痛、疲労、悪寒および発熱がありました。頭痛、胃腸障害は無かったです。 翌日、一日は倦怠感が強くやや辛かったです。仕事があったのですが、辛うじてこなしていました。

その後、夕方から夜にかけて徐々に発熱があり38.0℃まで上がりました。しかし翌日の2日目には平熱になり全身状態は改善し楽になりました。できればワクチン接種は休日の前日にやった方が良いと思います。また注射部位の痛み、赤み、腫れ 筋肉痛はおこりました。2,3日間は痛かったですが、その後は徐々に減っていきました。発赤は以下の写真のように4.5日続きましたが、あまり気にならなかったです。

個人的印象ですが、私は新型コロナワクチンでもやや副反応が強かったのですが、それよりもやや辛かったように思います。それでも接種後の一日が辛かっただけなので、2回目の接種はやろうと思い、先日、2回目をやりました。1回目よりは副反応は弱かったです。比較的楽でした。

またその後、外来の患者さんの何人かがワクチンを受けましたが、ほとんどの方はあまり副反応は強くなかったようです。一番強かったのは私だったかもしれません。やはりヒトによって違うのですね。

接種2日目の私の左肩です

ワクチン接種を考えている方のなかで、費用が高いので躊躇している方もいらっしゃるかと思います。比較的安価な生ワクチンでも良いですし、そのうち自治体からの助成が出るかもしれませんので、それまで待つことも選択肢の一つです。(一部の地域ではすでに助成があります)しかし後遺症はとても辛いことが多いので、できる時に接種するタイミングも大切かと思います。
何かお聞きしたいことがありましたらお問い合わせ下さい。

12. 最近、読売新聞に記載された記事です(2022年8月)