口腔機能低下症とは、口の元気が低下した状態で、栄養の偏りやエネルギーの不足になり、全身の健康に影響を及ぼします。
最近こんな症状ありませんか?
40代から衰える!?“食べる力”
(2020年1月29日(水)NHKおはよう日本で紹介されました)
普段の食事で無意識にしている「かむ」「飲み込む」、こうした“食べる力”が40代から衰え始めていることが日本老年歯科医学会の調査で明らかになりました。189人を調べたところ、40代で3人に1人、50代では2人に1人、“食べる力”が衰えていました。こうした症状を「口腔(こうくう)機能低下症」と言われ、進行すると全身が衰え、将来寝たきりになるリスクが高まることをいいます。
「口腔機能低下症」になると食べる量が減り、堅い物を避けるため、食材も偏ります。その結果、栄養不足となり、全身の筋肉が減ります。食欲不振が進み、食べる力がさらに衰える悪循環が生まれます。放置すれば介護を必要とする状態が早く訪れ、最終的には寝たきりになってしまう侮れない病気なのです。なぜ働き盛りから発症するのでしょうか?食事に時間をかけない現代の生活が口腔機能低下症につながっていると専門家は指摘します。「口腔機能低下症」は気がつかないうちに進行し、それに伴って全身が衰えます。いわば老化が早く進むようなものです。“食べる力”は少しずつ衰えていくので気がつきにくいですが、進行してからだと時間がかかります。だからこそ衰え始める40代から注意が必要です。
また「口腔機能低下症」とはオーラルフレイルがさらに進行して“疾患”としてみなされる状態で、加齢のみならず口腔機能の低下を引き起こす様々な疾患や障害などが影響を及ぼして口腔の機能が複合的に低下している病態を意味します。さらに口腔機能低下症が進行すると咀嚼機能不全、摂食嚥下障害が常態化し、全身的な健康が損なわれるようになります (図1)。 高齢者においては、むし歯や歯周病、義歯不適合などの口腔の要因に加えて、加齢や全身疾患によっても口腔機能は低下しやすく、また、低栄養や廃用、薬剤の副作用等によっても修飾されて複雑な病態を示すことが少なくありません。
以上のことより特に高齢者にとって、ご自身の生活環境や全身状態を把握し、口腔機能を適切に管理することはとても大切なことと言えるでしょう。口腔機能低下の重症化を予防するため、中年期から継続的に口腔機能の診断と口腔管理の指導を受けることで口腔機能を維持、回復することが可能となります。
(嚥下性肺炎防止としての高齢者の口腔機能向上への舌圧検査)
舌圧検査は簡便に実施できる客観的な口腔機能評価です。バルーン状の口腔内用プローブを口蓋前方部と舌の間で意識的に最大の力で押し潰すことで得られる、空気圧の変化を測定する機器(JMS 舌圧測定器)が医療機器承認を受けました。その結果、加齢に伴う舌圧の低下や摂食機能の低下などが定量的に明らかになってきています。検査結果の数値は即時に表示され、口腔機能の重要性の理解や訓練への動機づけに応用することができるようになりました。
検査結果をもとに口腔機能を鍛える訓練器具(ペコぱんだ®)も開発されており、口腔機能向上のリハビリのプログラムの実施が可能となってきています。
嚥下機能に関する検査として嚥下内視鏡検査がありますが、精密検査としては非常に有用です。実際、患者さんの負担もやや大きいです。
当院では嚥下内視鏡検査と並行して、この簡便な舌圧検査を導入しました。
実際の現場での評価およびリハビリを楽しく行えるように工夫された訓練器具(ペコぱんだ®)を使用し始めております。
JMS舌圧測定器は、舌の運動機能を最大舌圧として測定する機器です。
測定値は摂食・嚥下機能や構音機能に関する口腔機能検査のスクリーニングの指標になります。(当機器で得られた測定結果のみで、確定診断は行わないでください。)
摂食・嚥下機能は、舌の運動機能と深く関係しています。舌圧の低い人は、食事の際にむせるなどして食べ物をうまく摂取できず、結果として体内に栄養を十分に取り入れることができないため低栄養に陥る危険性が考えられます。
低栄養を予防するためには、全身の筋力強化と同様に、舌に対するリハビリテーション訓練が必要になります。
嚥下機能に関する検査として嚥下内視鏡検査がありますが、精密検査としては非常に有用です。実際、患者さんの負担もやや大きいです。
当院では嚥下内視鏡検査と並行して、この簡便な舌圧検査を導入しました。
デジタル舌圧計に接続した舌圧プローブのバルーンを患者様の口腔内に入れ、舌を拳上することによって、舌と口蓋の間でバルーンを最大の力で押しつぶします。その時の圧力を最大舌圧として測定します。
摂食嚥下障害を診断するにあたって、その前に全身状態の評価が大切です。全身状態の評価により現在の栄養管理が適切であるかを検討することが重要です。また摂食嚥下障害のある方は高齢者に多く、他の障害(片麻痺や高次脳機能障害など)を合併している場合があります。それらの障害は、摂食・嚥下機能に複雑にかかわっているため、それぞれについて十分な評価が必要です。そのため、これらの全身的な評価を行った後に、摂食・嚥下関連器官の評価・診断に進むのが基本です。
摂食嚥下障害の診断には「スクリーニング検査」および「精密検査」の二つに大別されます。それぞれについて以下に説明していきます。
①スクリーニング検査
スクリーニング検査とはより多くの人を対象に比較的簡易的な検査を行い、何らかの疑いがある人を絞り込む検査です。摂食嚥下障害のスクリーニング検査は、嚥下機能を ①反復唾液嚥下テスト ②水飲みテスト ③食物テスト ④頸部聴診法、により評価します。これらの検査を行い総合的に判断して、嚥下障害かどうかの診断を行います。またスクリーニング検査の前には面接を行い、既往歴や現在の症状、食事時の様子や食事時に困っていることなどをヒアリングし診断に役立てていきます。
②水飲みテスト
水のみテストは少量(約3ml)の冷水を口腔内に入れ、嚥下動作を2-3回行います。”むせこみ”の有無や、嚥下動作に対する呼吸状態の変化、声の変化を確認します。この試験で特に問題が見られなければ、次の段階で行われるのが食物テストです。
③食物テスト
水のみテストの水の代わりに患者様の食べやすい食物(セリー、プリンなど)を食べて飲み込んだ後に、口の中に食物が残っていないか、”むせこみ”がみられないか、呼吸の変化はないかなどを観察します。
④頸部聴診法
食物テストと併行して、頸部の聴診も行います。食べ物を飲み込む動作のとき聴診器を使って、首の部分で嚥下音が聞こえるかどうかを聴診します。この検査では飲み込む前後での呼吸の音の変化を確認しています。
その他にも咬む力を調べるために行う、ガムテストや症状や嚥下が障害されていると思われる時期に必要な検査を組み合わせて行います。
①ビデオ嚥下造影検査(VF)
エックス線による透視下で、実際の嚥下動作を確認する検査です。造影剤を混ぜた飲み物、とろみを付けた飲み物やゼリー、または実際の食事の一部などを実際に飲み込みます。 口腔内から咽頭にかけての実際の食物の飲み込みの様子を観察できるため、嚥下中に食塊が通過する様子や、喉頭、咽頭に残っていないか誤嚥していないかなどを、目で見て確認することができます。
この検査によって、摂食嚥下障害がどの部位の障害(どの時期)で起こっているのかがわかります。この結果により、安全に摂食できる食べ物の形状や、食べるときの姿勢について評価することができます。
この検査の結果により、今後の食事形態(形状や大きさ、やわらかさなど)や、食事時の姿勢の調節、嚥下訓練の必要性や方針などを決定します。検査は医師だけでなく、レントゲン技師、リハビリスタッフ、看護師などが一緒に入り、誤嚥時の吸引などの準備をし、安全性を確保してから行います。
②嚥下内視鏡検査(VE)
まずは、鼻の穴から、直径約5mm大の細い内視鏡を入れ、咽頭の様子を観察します。さらに内視鏡で観察しながら、食紅などで着色した、とろみをつけていない水分、とろみをつけた水分、ゼリー、あるいは実際の食事の一部などを飲み込みます。実際の嚥下の様子を観察していることになります。嚥下造影検査とは異なり、造影剤を用いることはありません。
実際に、水分や固形物を口に入れてから咀嚼して、飲み込むまでの咽頭の様子を、直接観察することができるため、
しっかりと咀嚼(そしゃく)ができているか
適切な大きさの食塊ができているか
嚥下動作がスムーズに行えているか
食物残渣(ざんさ)はないか
などを直接見ることができます。これがこの検査の大きなメリットです。この検査では食べ物の形状や食べる時の姿勢を調整することで、嚥下障害が改善する可能性があるかどうか直視下で観察するために行われます。
年を取ると、お口の状態(歯数、環境、力、動き)に問題が生じやすくなります。
全身の健康のためにも、お口の機能を保ちましょう。
元気なお口で、豊かな食事と健やかな生活、楽しい毎日を送りましょう。
1.全身・生活
2.口腔
①口腔衛生状態不良
②口腔乾燥
③咬合力低下
④舌口唇運動機能低下
⑤低舌圧
⑥咀嚼機能低下
⑦嚥下機能低下
チェックシートの各問に対し、ひとつでも「A」の回答があった場合は嚥下障害の可能性が高い、と判断します。
ご自身の生活環境や全身状態を把握し、口腔機能を適切に管理することはとても大切なことと言えるでしょう。
口腔機能低下の重症化を予防するため、中年期から継続的に口腔機能の診断と口腔管理の指導を受けることで口腔機能を維持、回復することが可能となります。
当院では嚥下内視鏡検査と並行して、この簡便な舌圧検査を導入しました。
実際の現場での評価およびリハビリを楽しく行えるように工夫された訓練器具(ペコぱんだ®)を使用し始めております。
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