認知症の中でもっとも罹患者が多いのがアルツハイマー型認知症です。重症化を防ぐためには早期発見がカギとなりますが、アルツハイマー型認知症診断の一助となる画像診断サービスの導入が始まっています。VSRAD(ブイエスラド)は、海馬傍回(かいば ぼうかい:海馬の周囲に存在する灰白質の大脳皮質領域)の萎縮の程度を確認することができる画像診断装置です。
VSRAD(ブイエスラド)は、海馬傍回(かいば ぼうかい:海馬の周囲に存在する灰白質の大脳皮質領域)の萎縮の程度を確認することができる画像診断装置です。
撮影した画像と健康的な状態の海馬傍回を照らし合わせることで、萎縮の具合が判明できるのです。英語の「Voxel-based Specific Regional analysis system for Alzheimer’s Disease」の頭文字を取ってVSRAD(ブイエスラド)と呼びます。現在、脳ドックなどではMRIで脳の状態を検査しますが、海馬傍回の体積は非常に小さく、従来の画像診断だけでは脳の変異を見逃してしまうことも少なくありませんでした。そこで、MRI検査と合わせてVSRADを実施することで、アルツハイマー型認知症診断の正確性を補うことが可能になりました。頭部MRI+MRA検査(約15分)に約6分追加撮影で検査が出来ます。
一般的に、認知症の発症を正確に調べたい場合、PETやSPECTなどの核医学検査という選択肢もあります。この場合、造影剤を点滴で体内に流し込んでおこないますが、微量とはいえ放射線物質を取り入れるため、少なからず体に負担が生じます。また保険適用外診療であることから、1回の検査で数万円の個人負担が生じます。しかし、VSRADでは人体への負担は少なく費用も低額です。あくまでVSRADは海馬傍回の萎縮具合を調べるためのツールであって、脳の萎縮が確認できただけで認知症と診断できるわけではありません。そして、VSRADの結果に異常がみられなくても認知症を発症している可能性もあります。また、アルツハイマーだけでなく前頭側頭型認知症やピック病でも海馬傍回に萎縮がみられるため、VSRADの結果だけでアルツハイマー型認知症と断定することはできません。
検査を受けられる年齢制限もあります。当院では50歳以上を検査対象としています。50歳未満の若い脳では検査結果が不規則で正確性に欠けるためです。
前項で説明したとおり、MRI検査とセットでの実施が原則となります。同時に、MRI検査を実施できない人(心臓ペースメーカー、閉所恐怖症など)の実施も不可能です。
MRI検査: 保険診療 VSRAD: 3000円(オプション)
検査の結果、海馬傍回の萎縮は「VOI萎縮度」という数値で表れます。
1) 萎縮度0~1:アルツハイマー型認知症の可能性は低い。
2) 萎縮度1~2:若干の萎縮が確認できる場合、今後の経過観察と引き続きMRI検査が必要となります。
3) 萎縮度2~3:強い萎縮がみられる場合、アルツハイマー型認知症を発症している可能性は高まります。
4) 萎縮度3以上の場合:ほぼ確実に認知症を発症しているとみられ、認知症の治療が必要になります。
さまざまな普及啓発によって認知症への関心が高まっていますが、やはり早期発見が肝心です。今回ご紹介したように、VSRADは低額かつ人体への負担が少なく受けられるメリットがあります。認知症が不安だという人は、いつもの脳MRI検査にVSRADのオプションを加える検査をお勧め致します。
アルツハイマー認知症では、海馬傍回付近の萎縮がもっとも早期に見られるためです。
MRIで撮影した頭部のデータと、あらかじめ用意しておいた健康な脳の画像から作ったデータをコンピューターで照合・解析し、脳の萎縮の度合いを測ります。
海馬傍回付近は非常に小さく、目で萎縮を確認することが難しいのですが、VSRAD(ブイエスラド)ではコンピューター解析により確認できます。
患者様は頭部のMRI画像を撮るだけですので、簡単にできます。通常のMRI検査の一環として行うことができ、検査中の痛みはありません。食事制限等もなく、検査前後も普段通りに生活できます。